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お腹が痛い…。から見えた電波の可能性
昨年の夏、右下のお腹の痛みに悩まされていました。いわゆる「おなかの調子が悪い」わけではなく、ズーンとした重い痛みが強弱を繰り返し続いていました。病院に行って検査のフルコースを受けましたが原因はわからず、他の病院へ行くことに…。その後、原因はインナーマッスルの肉離れと判明し、大事には至らず安心しました。
実は、私は数年前から消化管疾患を対象とした製薬企業と共同研究に取り組んでいます。この研究がめざすところは、小腸や大腸などの消化管がどんな運動をしているのか(あまり動いていない、動きすぎているなど)を、正確かつ安全に、そして簡易に見えるようにすること。現在は、たくさんのリングが入ったカプセルを飲み込み、数回のX線透過画像の撮影を行って、リングの位置の広がりから消化管の運動を推測する方法が代表的ですが、この方法だとX線の被曝を伴うために撮影回数を増やすことができず正確な運動がわからないこと、X線撮影装置がある医療施設に行かなくてはならないこと、などの課題があります。
そこで電波の可能性に注目!
複数のアンテナを体表に貼り付けて、専用錠剤からの反射波が得られるよう、適切に選んだ周波数の電波を送信し、その受信波形を解析することで、飲み込んだ専用錠剤の位置をリアルタイムで推定することにチャレンジしています(図1)。使用する電波の強さは携帯電話よりも低いので、人体への影響もありません。
最近実施した実験では、簡易な人体胴体モデルに8つのアンテナを貼り付けて計測し、らせん状の軌跡で推定精度としては十分な1cm程度の精度を実現しました。人の動きや外来の干渉電波による影響をどうやって除くかなど、まだいくつかの課題は残っていますが、この方法だと非常に安価で装置を作ることができ、また、連続的な消化管運動の記録が可能で疾患の部位を正確に知ることができるので、医師の方から「これまでにない画期的な医療機器になる」と期待をいただいています。
現在、食文化が急速に変化したことにより、消化管疾患を持つ患者さんが世界中で急増しています。しかしながら、多くの国では高度な医療設備を持つ機関が近くにないため、深刻な状態になってしまう方も少なくはないのが現状です。この技術が実用化されれば、郵送もできる安価な診断装置と、その装置で計測したデータを送る携帯電話網さえあれば、消化管疾患の部位を正確に見つけることができるようになります。
SDGs*1の達成目標のひとつである「すべての人に健康と福祉を」の実現に貢献するため、これからもNICTはチャレンジしていきます!
*1 SDGs:Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略。2030年までに達成すべき17の目標として、2015年9月に国連で開かれたサミットの中で世界のリーダーによって決められた国際社会共通の目標。
こちらでご紹介した技術にご興味のある方は、ワイヤレスシステム研究室までお問合せ下さい。
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