研究センター長挨拶

量子ICT協創センター所長

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量子ICT協創センター研究センター長 藤原 幹生

量子ICT協創センターは、NICTが国内の量子イノベーション拠点の一つである「量子セキュリティ拠点」に指定されたことを受け、量子技術が拓く新たな情報セキュリティを社会へ届けることを目的に2021年4月に発足しました。
現在のインターネットを駆け巡る情報の実体は、0と1という記号を表す電気や光のパルスの膨大な羅列です。この2つの数字による情報の抽象化が完成したのは20世紀の半ば頃ですが、この枠組みが今日まで延々と使いつづけられてきました。しかし、この枠組みは、今、量子力学という究極の物理法則によって書き換えられ、新たなパラダイムへ飛躍しようとしています。
量子力学の世界から素直な心で眺めると、究極の情報を担うのは、確固として曖昧さのかけらもない0, 1のビットではなく、0でもあり1でもありうるような量子力学的なビット、キュービット(quantum bitの略)になります。1990年代半ばには、キュービットで構成される量子コンピュータが現在の暗号システムを瞬時に解読することが示され、社会に衝撃を与えました。今日、小規模の量子コンピュータのクラウドサービスが始まっています。
一方、量子コンピュータによってその安全性が冒されはじめた現代暗号に換って、究極の安全性を保証する新しい方式が量子暗号です。量子暗号はすでに実用化され、各国でインフラ構築が始まりつつあります。
今後、情報通信システムは『量子』の土台の上に再構築されてゆくと思います。実際、量子コンピュータや量子暗号を従来の技術と融合することにより、新しいアプリケーションやサービスが生み出され始めています。
このような背景のもと、私たちはNICT内の関連部門と協力し、研究開発から社会実装、標準化、人材育成にわたる様々な活動を一人でも多くの方々と連携して進めるため、オープンな協創環境を整備しています。様々な分野、業界の皆様と力を合わせ、新たな融合領域「量子セキュリティ分野」の創成や成果の社会実装に取り組んで参りたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

近況紹介

2010年に、都市圏の量子暗号ネットワーク(Tokyo QKD Network)を構築して動画の完全秘匿伝送を世界で初めて実現しました。Tokyo QKD Networkで開発された技術は2019年頃から次々と国際標準に採択されています。

量子通信や量子暗号の社会実装には、暗号技術、符号化技術、ネットワーク技術、衛星通信技術といった周辺分野と適切に融合させることが必須です。そのためには周辺分野の技術習得が必要で、場合によっては周辺分野自体の新技術まで我々で開発する必要もあり、時間も手間もかかります。一見すると基礎研究から離れた実用に近い現場ですが、逆に真の異分野融合が必要であり、そういった格闘の中から情報通信分野の根幹を貫く普遍的な原理が垣間見えてきます。

現在、量子ICT協創センターでは、NICT内の各研究室の協力のもと基礎研究から応用研究、社会実装に至るまで様々なテーマに係る打合せ、勉強会が日々開催されています。参加者のスペクトルは、産学官の組織の研究部門、事業部門、知財や標準化部門、事務部門など多岐にわたります。量子技術が切り開く研究開発やビジネスの最前線は、週単位で技術やビジネスの風景が塗り替わるような躍動感に溢れています。

エキサイティングな時間を皆さまと共有し、ともに取り組んで行けることを願っております。

Profile
量子ICT協創センター研究センター長 藤原 幹生
1992年 郵政省通信総合研究所(現NICT) 入所
2004年 基礎先端部門量子情報技術グループ 主任研究員
2016年 未来ICT研究所 量子ICT先端開発センター 研究マネージャー
2021年 未来ICT研究所 小金井フロンティア研究センター 量子ICT研究室 室長
2023年 量子ICT協創センター 研究センター長
博士(理学)
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