QKDNの標準化は、主にITU-T (International Telecommunication Union, Telecommunication Standardization Sector) で取り組んでいます。
標準化
標準化活動の目的
一般に研究開発により得られた技術をユーザが安心して利用できるためには技術を認定する仕組みが必要となりますが、それにはまず認定の判定基準となる技術仕様を設定しなければなりません。技術仕様を設定する活動を当該技術に関する標準化活動とよびます。
当センターは量子暗号に係る標準化文書の開発だけでなく、関係者との協力のもと、標準仕様に準拠した量子暗号通信網の開発、評価・検定・認定制度の整備にも積極的に取り組んでいます。
活動の内容と進捗について
標準化に向けた活動
量子ICT協創センターは量子暗号に係る国際標準化活動にも積極的に参画しています。 当センターは国内外の主要な5つの標準化団体の全てにおいて精力的に活動することで、量子鍵配送ネットワーク(QKDN)及び量子鍵配送装置(QKD装置)に関する国際標準文書の開発に尽力しています。
国際標準文書の開発状況
量子鍵配送ネットワーク(QKDN)標準文書の開発
初の国際標準化に向けたITU-T勧告「Y.3800」の承認
我が国では、NICT、NEC、東芝等が中心となり、世界最高性能のQKD装置を開発、さらには実証テストベッド「Tokyo QKD
Network」上でのネットワーク技術の開発、長期運用試験、様々なセキュリティアプリケーションの開発に取り組んできました。NICT、NEC、東芝の三者は、これらの成果をQKDネットワークの基本構成と機能、サービス手順などに関する勧告草案としてまとめ、2018年9月よりITU-T
SG13への寄書活動を開始しました。
日本からの提案はQKD関連として初の国際標準化に向けたITU-T勧告であるY.3800のベーステキストとして採用され、日本のQKDネットワーク技術が、ITU-T初のQKDに関する国際標準の骨格を形成することとなりました。
今後の活動
現在までに基本的な勧告シリーズが完成しており、これらの勧告の完成を受けて、関連する標準化の検討が加速し、QKD関連の製品開発やサービス創出に向けて企業が投資しやすくなり、ユーザは導入を検討しやすくなると期待されています。
NICTは今後も、ITU-TでのQKDN関連の国際標準化に尽力し、QKDを用いた秘匿性の高い暗号通信サービスの実用化と普及を加速させ、安全・安心な社会の実現に貢献します。
量子鍵配送装置(QKD装置)の標準文書の開発
QKD装置の標準文書の開発は、主にETSI (European Telecommunications Standards Institute)及びISO/IEC/JTC 1 (International Organization for Standardization/ International Electrotechnical Commission, Joint Technical Committee 1)で取り組んでいます。
ETSIにおける活動
NICTはETSIにおけるQKD装置のプロテクションプロファイル(Protection Profile, PP)と呼ばれる文書の開発に参加しています。
一般にPP文書とは、IT製品が満たすべきセキュリティ技術仕様を規定する文書です。IT製品はPP文書に準拠した評価・認証をされることで、情報セキュリティ機能(機密性・完全性・可用性)が保証された製品とみなされます。
量子ICT協創センターは、ETSIでPP文書の開発が始まった2019年より現在まで、国内ベンダ及び大学研究者と協力してその改訂作業に精力的に携わっています。
ISO/IEC/JTC 1における活動
ISO/IEC/JTC 1において、ISO/IEC 23837 と呼称される文書の開発に、2019年の開発開始時から参加しています。
ISO/IEC
23837は量子鍵配送(QKD)装置の満たすべきセキュリティ要件と装置の試験・評価方法を規定するもので、ETSIにて開発されているPP文書とは異なる評価・認証規程として開発されています。
量子ICT協創センターはETSIでのPP開発と同様、当センターは国内ベンダ及び大学研究者と協力してISO/IEC
23837の改訂に貢献してきており、2021年度だけで160件超の修正コメントが採択されています。