PEOPLENICTで働く人たち #6
海外で学んだ「現場主義」のおかげで
セレンディピティに恵まれ、大きな成果を達成できました。
※Serendipity: 偶然の出会いから予想外のことを発見すること

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大岩 和弘OIWA Kazuhiro未来ICT研究所
主管研究員

東京大学大学院理学系研究科博士課程修了(理学博士)。同年、帝京大学医学部生理学教室助手となり、1993年、通信総合研究所(現在のNICT)に入所。生体物性研究室室長、バイオICTグループグループリーダーを経て、2008年、未来ICT研究センター長に就任。2011年には未来ICT研究所所長となる。2013年にNICTフェローとなり、主管研究員として研究現場に復帰し現在に至る。

大岩和弘主管研究員

情報通信の分野でバイオ研究に挑戦するという面白さに惹かれてNICTへ。

子供の頃は生き物が大好きでした。朝早く起きてカブトムシを取るためにクヌギ林へ行ったり、ザリガニの卵を孵化させて観察したりするということを好んでやっていました。進学した学校は実験をたくさん行うところで、よく顕微鏡を覗いていました。そこで生物の非常に整然とした構造の美しさに惹かれました。不思議だらけで魅せられていたというのが、生物学を目指した動機になります。
平成5年、当時のNICTが基礎研究として情報通信研究の分野でバイオ研究を行うという斬新な視点に興味を持ち、生命科学の研究室へ応募しました。情報通信とは直接繋がらないように見えるバイオの研究など、NICTは新しい挑戦をしていました。生き物からタンパク質を取り出すと、それは物として扱うことができます。動くタンパク質を並べ、使うとかっこいいデバイスができるのではないかと、工学的なセンスと融合させたい気持ちがありました。実際、当時ナノ機構研究室と共同研究して、デバイスを作るということを最初にやりました。この分野の研究活動も右肩上がりで面白い状況でありました。このようにNICTが研究テーマを選択する際に高い自由度を与えてくれたことは、幸せなことでした。

サイエンストークで参加者に説明する大岩主管研究員

所長になってからは「言葉の選び方」に気を付けました。そうして、応援してくれる人を作りました。

現在は研究所の研究活動全般を支援し、助言をする立場にいます。長年、情報通信研究分野でバイオ研究の応用に関する研究者として培った知見や、未来ICT研究所の所長としてマネジメントしてきたことを活かしています。同時に研究者として、生命科学の基礎研究をバイオICTグループで実施しており、今も顕微鏡観察、計測を行っています。NICTでの活躍を期するのであれば、常にアンテナを張ることです。自分のアイデアを大事にして堅実に研究を進めることも重要ですが、知りたいという欲求に対して有効だと思う技術はなんでも取り込む柔軟さも大切です。
NICTの研究は国の政策決定に関わることもあり、技術や意義などを専門外の方々にも分かりやすく説明しなければならない場面が多くあります。また、大学での研究とは違って組織的な活動を作り上げていく必要があるので、研究所の所長になってからは、できるだけ内外の異なる研究分野と「融合」する研究を奨励しました。それぞれの分野を結び付けるためにはインタープリター*1 が必要です。この役目を果たすために、書物を読み漁り、自分に合ったプレゼンテーションの仕方、言葉の選び方を工夫しました。例えば「情報」という単語でさえ、生物分野と情報通信分野では意味が異なります。ですので、講演やプレゼン時は入念な準備をします。もともとアドリブが苦手なのですが(苦笑)。これらの積み重ねにより認知度が上がっていくと、「面白い」と賛同してくれる人が増え、応援団が出来ていきました。他人(ひと)と会い、話し、手を携える。他人からインスピレーションを受けることで、より発展的な研究方針を見つけることができます。


*1 Interpreter: 通訳者
顕微鏡を覗いて観察しながら作業を行う大岩主管研究員

研究活動においては国際感覚も大事。現場での交流からブレイクスルーも生まれます。

私が駆け出しの研究者のころ、酵素学の権威であったデイビット・トレンタム先生*2 に技術を習いたいと手紙を書き続けていました。いざ受け入れていただくとなった際に、大学からNICTへ移ったことで予定していた資金源の面で問題が生じました。しかし当時の上司が工面してくださいました。こうして留学も実現することとなりました。
トレンタム先生は威を張ることなく、近くで手取り足取り教えてくださり、現場を重んじる研究者魂には大いに学ばされました。先生は常にラボにいるので物事を解決する能力やフットワークも軽かったのです。私が悩んでいると、あの人に相談するといいよとすぐに指示をくださいました。研究者は時に、成果が出ない苦しい状況に陥ります。この時に重要なのは他人とのネットワークです。そこで新たな共同研究が生まれると、ブレイクスルーが起こることもあるのです。
このような観点から見ると、国際感覚が研究活動にとって重要であるということなのでしょう。NICTでは、国際会議のようにグローバルな学術交流を自ら企画することも可能です。我々は国際会議を定期的に開催し、海外から多くの研究者を招聘し、深い議論を行ったことで、この分野の進展に大きく貢献できたと言えます。


*2 Dr. David R. Trentham: 英国王立協会フェロー (FRS) の称号を持つ生化学者。

私の研究成果

現場に足繁く通った成果か、ある日タンパク質のフィラメント*3 が、ガラスの上で動き回るのを発見しました。技術員はよく見る現象だと言うのですが、みんなが帰ったあと夢中になって調べなおしてみました。その時、顕微鏡の拡大倍率を変えてみたことで、そのフィラメント*3 が実は円軌道を描いていることを発見できたのです。この時の喜びは今でも忘れません。セレンディピティですね。「これを初めて見たのは世界で自分だけだ」というわくわく感。研究者冥利につきます。京都大学の理論の先生に相談し、背景にある物理現象を取り出すことに協力してもらいました。こうして、2012年に「Nature」に論文掲載するに至りました。材料研究と生命科学の研究の融合研究は、今では世界的に行われている研究ではありますが、ナノテク材料や加工技術を使ってタンパク質モーターを人工的に基盤上に配向(はいこう)させる研究など、現在注目されている分野の先駆けとなる研究を生み出すことに成功しました。


*3 Filament: 細かい糸状の構造
「全反射蛍光励起システムを用いた微小管運動の観察

私のオフタイム

てんとう虫がとまっている草を掴む子供の手

現在は新型コロナウィルス感染拡大の影響で在宅勤務をすることが多くなりましたが、会議や書類仕事を在宅時にこなし、研究は出勤日に集中して行っています。効率化が図れたことで、実験実施時間を容易に確保できたことは嬉しい限りです。土日の休みは家族サービスと趣味のテニスに時間を費やしています。子供が小さい頃はキャンプなどをしていました。石ころの下を見てみるなど、子供の世界が広がるように「きづき」を促していましたね。将来は近所の子供たちにも「きづき」の世界を教えたいと思っています。

※写真はイメージです

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