名古屋大学大学院 理学研究科 博士後期課程修了。オーロラに関する研究で博士(理学)取得。その後、JSPS特別研究員として名古屋大学宇宙地球環境研究所にて勤務。2010年4月NICTへ有期雇用研究員として入所。2015年5月にパーマネント研究員に。現在は宇宙天気に関わる研究開発に従事。オーロラ予報モデルや放射線帯予報モデルを開発している。
子どもの頃から星を見るのが好きで、大学では宇宙にまつわる自然現象を研究。オーロラに関する研究で理学博士も取得しました。その知見を社会に還元したい。そう思ったときに、それを直接叶えられるのは、国内だとNICT宇宙天気予報センターのみでした。私が通っていた大学には偶然NICT出身の先生がいらっしゃり、「宇宙天気」に関する授業を受ける機会がありました。宇宙に関わる基礎研究をしている大学や研究機関は国内に多数あるのですが、それを業務として継続的に情報発信しているのは日本ではNICTだけだと知りました。はじめは有期雇用でしたが、およそ5年でパーマネント職になりました。
実は、有期雇用の期間中に第1子を出産しました。当時は、研究キャリアを重ねるためにもっと研究に時間を使いたいという気持ちと、子供を自分で育てたいと思う気持ちに挟まれ葛藤しました。悩んだ末、産休・育休を合わせて約1年間という長い期間の休暇を取得しました。復帰後、子育てをしながら研究や次の職探しをするのは大変でしたが、私は恵まれていました。良い意味で、妊娠中も子育て中もそうでなかったときと変わらない内容で研究を継続し、また新しい研究課題にも取り組ませてもらいました。その時の研究成果を認めてもらえパーマネント職に昇格もできました。NICTは、テレワークもしやすい環境です。今は、テレワークも活用しながら仕事と2人の子供の育児を(日々悩みは尽きませんが・・・)両立させています。
私の仕事は、人工衛星を守るために、不具合の原因となる宇宙環境の変動を予測すること。人工衛星の不具合なんてなかなか身近にイメージすることはないかもしれませんが、実は私たちの日々の生活はもうすでに密接に宇宙に関わり始めています。手元のスマホの位置情報、GPS衛星からの信号です。それに宇宙旅行も。私が今取り組んでいる課題は、放射線帯やオーロラサブストームを予測することです。観測、シミュレーション、経験則など様々な手法を駆使し宇宙天気の予測をするのですが、予報が当たることがあれば、まだまだ外れることも。「毎日」反省です。当たったときはなぜ当たったのか。外れたときはなぜ外れたのか。その分析を活かして次につなげていくことが、未来の安全な宇宙利用につながると信じています。いつか宇宙天気予報が地上の天気予報のように利用される社会が来る。その前に、予報精度をあげることは日本のみならず世界中の研究者の共通課題なんです。
宇宙天気を予測するというこの取り組みは、自然科学だけではなく情報や経済、コミュニケーションなど文理を問わずさまざまな知識を必要としています。特に若い研究者にこそ開かれた環境。ここにはたくさんのチャンスがあります。私も宇宙天気という枠組みの中で、自分が大事だと思うことを自由に立案してやらせてもらっています。私は2019年の8月から12月まで、子供を連れて渡米しアメリカ・ロスアラモス国立研究所で客員研究員を務めさせていただきました。NICTはそれが許される、むしろ応援してくれる環境。どんなチャレンジでも基本、NOと言われることはないですね。だからぜひ「未来の社会に向けてこんなことをやってみたい」というアイディアのある人はNICTに来てください。それを実現できる環境がここにはあります。
オーロラは自然現象のなかでもなじみやすいもの。大学院ではその研究で博士を取得しました。NICTでは『オーロラ・アラート』というサイトで、オーロラの出現予報とアラスカ・南極の空の映像を発信しています。また、宇宙で飛び交っている宇宙放射線も私たちの研究対象。地上では大きな影響を受けることはないですが、宇宙飛行士や人工衛星にとっては被爆や機器の障害の原因となるため、宇宙放射線の変動に関する予報を出しています。
2人の子どもがいるので休みの日はずっと一緒にいます。最近は親子でドラえもんの映画にはまっています。子供達は2112年にドラえもんが本当に誕生するのか気になっているようです。