民間企業より転職。前職の企業がNICTと共同プロジェクトを実施していたことを機に2009年NICTへ入所。2011年より有期研究技術員。2015年よりパーマネント職員。サイバーセキュリティ技術の研究開発に従事。
前職では、民間企業にてセキュリティ監視システムの開発をしていました。NICTを知ったきっかけは、当時の同僚がNICTと共同でプロジェクトを実施していたこと。培ってきたセキュリティに関する知識や技術を公的な機関で活かしたいと思い、彼らに紹介してもらう形でNICTへ入所しました。それまで私は民間企業でシステム開発を専門的に行う技術者であったため、研究所での研究開発の経験がありませんでした。入所当時は民間企業との開発プロセスの違いに戸惑うことが多かったのですが、最適な研究開発プロセスを自ら積極的に提案することで解決してきました。いわゆる「研究所」ですので技術者の肩身が狭い職場ではないかと思われるかもしれませんが、のびのびと責任ある仕事をすることができます。技術職にも研究職と同等の待遇も整備されており、働きやすい環境です。
私の所属しているサイバーセキュリティ研究室では、複雑化するサイバー攻撃に対応するためのセキュリティ技術を研究しています。そのなかで私が担当しているのは、研究者と協力しながら課題解決に必要なシステムを内製で開発すること。また、これらの研究成果を多くのユーザに使ってもらうよう社会展開させることです。設計からプログラミング、ドキュメント整備、テスト、システムのリリース、運用・保守までのプロセスを担っています。この仕事の難しいところは、1~3ヶ月という短期間で研究課題をデザインに落とし込み、システム化しなければいけないところ。アイディアを出し合い、プロトタイプを作成し修正点を確認して、というプロセスを何度も重ね、完成へと近づけていきます。各メンバーが自分の得意分野、不得意分野があるため、活発に議論しながら補い合って進めています。
NICTで働く最大のメリットは、採算性を重視する民間企業ではできないようなチャレンジングな研究開発ができること。私の場合、可視化によるセキュリティオペレーション手法の研究開発という実験的な研究課題に約10年間取り組み、世界に唯一無二の独創的なビジュアルを持つシステムを実用化させることができました。また、NICT内・国内外の組織との連携を通じてさまざまな分野のエキスパートと出逢いがあるため、日々刺激を受けることができます。やはり嬉しいのは、自分が携わったものが社会の役に立っていると感じられること。イベントでのお披露目などがあると何万人もの方の目に触れることになります。将来的には自分たちの研究成果を国産のセキュリティツールとして広く普及させて、より社会に貢献したいですね。そのために、他の研究機関や企業とも密に連携し、社会のニーズに柔軟に対応できるように努力していきます。NICTには研究職だけではなく、さまざまな分野での技術職の活躍の場もあります。何かひとつ飛び抜けたものをお持ちなら、ぜひチャレンジしてみてください。
私が開発に関わり、社会展開したシステムの例として「NIRVANA改」や「DAEDALUS」があります。NICTは公的機関のためシステムの販売ができません。そのため、これらのシステムは民間企業に技術移転し、その企業経由で販売され、企業や教育機関、研究機関などに導入されています。国内最大規模のセキュリティコンテスト「SECCON CTF」では、サイバー模擬攻防戦可視化システム「NIRVANA改 SECCONカスタム」と「AMATERAS零」を実運用し、競技の状況をリアルタイムに視覚化しています。これらのシステムは台湾、ニュージーランドなど海外のセキュリティ競技大会でも使用されています。
休日は子どもと公園へ行くなど家族と過ごすことが多いですね。職場と自宅が近いので、平日でもなるべく早く帰宅して夕食は家族と一緒に食べるようにしています。しっかりオフの時間が取れるのはありがたいです。