東北大学大学院理学研究科 地球物理学専攻 博士課程修了、博士(理学)取得。科学技術振興機構(JST)のポスドク研究員、宇宙航空研究開発機構(JAXA)プロジェクト研究員、フランスEcole Polytechniqueのプラズマ物理研究所(LPP)のポスドク研究員、惑星天体物理研究所(IRAP)における日本学術振興会(JSPS) 海外特別研究員を経て、2015年にNICT入構。電磁波研究所 電磁波伝搬研究センター 宇宙環境研究室にて、全球大気圏-電離圏モデル「GAIA」の開発・機能向上を進めている。
子供の頃に、きれいな惑星の写真に惹かれ、宇宙にはどんな世界が広がっているのだろうと興味を持ちました。また高校生のときの先生が数式を用いて物理を説明してくださり、自然が数式で表される面白さを感じました。惑星について学びたい、知りたいと思い、天文の学部のある大学に進み、惑星を研究するための学問である地球物理学を専攻しました。 修士学生のときに、研究室の先輩が就職した小金井本部を、研究相談のために訪問したことがNICTとの出会いでした。博士課程修了後に科学技術振興機構(JST)研究員として参加した地球~惑星のシミュレーションプロジェクトでは、以前NICTにいらした磁気圏シミュレーション開発・研究で有名な田中高史先生が代表で取りまとめておられ、NICTの研究者も参加されていて、地球周辺のシミュレーション研究は大規模ですごいと感じました。 NICTは太陽から磁気圏・電離圏までにわたるいろいろな領域を対象とする観測・シミュレーション技法の双方の研究者が集まり、魅力的なグループでした。そうした研究者がいる中で研究できたらとても面白そうだなと思いました。 フランスでJSPS海外特別研究員として研究活動を行い任期後の就職先を探していたときに、NICTで研究者採用をしていることを知り、領域間結合という興味ある研究テーマだったことから応募し、現在に至ります。
宇宙天気で対象としているのは、太陽から地球までの、宇宙の中でも身近な環境です。そこで起こる自然現象は、無線通信の品質やGPS測位の精度などを通じて私たちの生活に影響を及ぼすことがあるので、状況を監視しながら、予測するためのシミュレーション技術を開発しています。また、24時間365日休むことなく宇宙天気予報*1を発信する業務も行っています。 その中で私は、地上から超高層までを含む全球大気圏-電離圏モデルの拡張・開発研究に携わり、太陽圏や磁気圏といった上層からの変動入力の機能の向上や、モデルのリアルタイム・予測計算の開発・運用を行っています。また、モデルからの出力を、宇宙天気予報や現況把握、考察の参考情報として提供したり、モデルで求められた電子密度分布をもとに、短波帯の電波伝搬を可視化するウェブサイトHF-START*2の外部公開をしています。このモデル作りに携われていることは、学生の時には想像もしていなかったことです。 宇宙天気が対象とする太陽-地球周辺環境は、複数の領域からなる複合系であるため、関連する物理やシミュレーション、観測に関する知識・技術などの専門性が必要です。さらに、その社会影響も様々です。他領域のモデルとの連携や、観測情報の取り込み、事業者の方々との情報交換が不可欠なため、広い領域にわたる研究者、周辺分野の関係者、宇宙天気と関連する社会事業者の方々などとのコミュニケーションが大事だと感じています。 また、私たちの研究室では戦前から電離圏観測を継続しており、日本国内だけでなく、南極や東南アジア地域を含む膨大な観測データの蓄積があります。他機関からも提供依頼がある貴重なデータが自組織にあり、それを活かして研究開発を行えるといった点も、NICTの良いところだと思います。
私たちの研究室には、太陽から磁気圏・電離圏といろいろな領域を対象とする、観測・シミュレーション技法双方の研究者が集まり、研究内容について身近に相談することができます。理事長や理事といった幹部の方とお話しする機会も多くあり、高い視野での助言やコメントをいただくこともできます。
また、研究室には女性も多くて、子育てをしながらも仕事を続けやすい、恵まれた環境だと思います。私自身、出産・子育てを経験しましたが、周囲に同世代で子育てを経験された方も多く、相談しながら研究・業務を続けることができました。
NICT全体でも女性が多く、また、女性を増やそうという取り組みもあります。もしかすると観測などでは力仕事もあるのかもしれませんが、女性が活躍できる環境であると思います。組織の体制的な面でも、子育てを支援してくださる環境が整っています。一例としまして、私がNICTのテニュアトラック研究員になった当時*はテニュアトラック制度ができたばかりということもあり、まだ育児休業および介護休暇のテニュアトラック研究員における制度がなかったのですが、相談したところ休業期間に応じた任期の延長や進捗報告時期の特別設定などを配慮くださり、制度を整備いただきました。
*現在は主任研究員。
地上の天気予報でシミュレーションモデルが欠かせないのと同じように、宇宙天気でも精度の良い予測ができるようにしていきたいと思っています。また将来はいろいろなインフラで宇宙空間が使われるようになり、そこで電波は今後も広く使われていくと思うのですが、その電波は宇宙天気に影響を受けたりします。宇宙天気を予報するだけではなく、宇宙天気の情報がインフラにも組み込まれて、宇宙天気にもびくともしないものになるように、精度の高いモデルを作っていけたらと思っています。 今後は研究を通して社会および科学に貢献していきたいと考えています。NICTに入所するまでは、自分の興味ある惑星研究を追求してきましたが、NICTで社会との接点を持ち、社会事業者の方々と議論する機会を通して、研究が身近な社会とも関係していることを知りました。それがひとつのきっかけとなって、研究を通じて社会に広く貢献できることにやりがいを感じるようになりました。純粋な科学研究も面白いですが、それに加えて社会とつながることができることに、とてもやりがいを感じています。 宇宙環境・宇宙天気は、地球周辺の環境が複雑でわかっていないことも多く、進化する情報技術とも関わる分野です。宇宙天気の社会への影響や評価も含め、開拓する余地が多くあります。夢があって面白い分野だと思っております。
休日は、夫が2人の子供たちと公園に出かける間に、私は買い出しや家事を済ませ、夫と子供たちが帰ってきたら一緒にカードゲームをしたり、おやつ作りをしたりしています。春や秋の季節がいい時期は、お昼ご飯を持って家族で公園や動物園でゆっくり過ごしています。 子供が2人で遊んでいるのを見るのは癒されます。あと、上の子がお手伝いしてくれると、ああ、こんなに成長したんだと嬉しくなります。将来、子供たちがもしも宇宙に興味を持ってくれたら、教えてあげたいなと思います。